研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第14号

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日本語とイタリア語における時間を表す副詞について

チェスパ, マリアンナ

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/57692

Abstract

本稿は,日本語とイタリア語における時間を表す副詞の適用に関して述べることを目的としている。まず,日本語における副詞と動詞の係り受けに関する副詞の属性と動詞の属性に着目し,その係り受け制約について観察していく。具体的には,副詞「もう」・「すでに」と動詞のその性質と形式との共起に関して説明することを目的とし,「二年前に」などのように明確に過去時を表す副詞を含めるケースも対象としている。周知のように,「もう」と「すでに」は複数の解釈を可能とする副詞であるが,本稿において取り上げるのは「経験」と「予期区間内」のみである。副詞「もう」と「すでに」の用法とその解釈に関して,母語話者は何を基準として使い分けているのか,何を基準として解釈しているのか,また用法においてどのような制限があるのかという疑問が生じ,それに関して本稿において論じていくこととする。具体的に,以下の三点を明らかにすることを目的としている。まず,動詞の性質により制限が存在しているか否か,また「もう」と「すでに」の用法において相違点が存在しているか否か,最後に「タ形」と「テイル形」との共起においても相違点または制限が存在しているか否かという三点である。結論として,「もう」と「すでに」の用法において相違点が存在しており,それは動詞の性質によるものであり,当該動詞の「反復性」によって可能となる解釈が異なる。反復可能な動詞とは異なり,反復不可能な動詞において解釈ができるのは「予期区間」のみであると言える。最後に,副詞と時制の共起の点に関しては,イタリア語と日本語がかなり異なる言語であり,「もう」と「すでに」を用いた例文をイタリア語に訳すと異なる点がいくつか出てくるため,本稿ではその相違点に関して論じていく。特に,イタリア語の場合,副詞を正確に解釈するためには「tempi perfettivi」を区別すべきであるという視点から論じていく。

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