研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第14号

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ノダ系の諸表現の包括的記述

安田, 崇裕

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/57694

Abstract

主節末で平叙文の形を取るノダ表現には,信念用法と当為用法という二種 類の用法がある。当為用法のノダ表現は内容にも統語的環境にも制限が強い。 それに対して信念用法は認識モダリティー形式を内包し,またモダリティー 形式が後続することも可能である。「のではないのだ」のようにノダ表現の内 容にノダ表現が生起することもある。 信念用法のノダ文は「既定性」の条件を満たす内容でなければ使用できな い。条件が満たされるのは,その事柄が以前から実現している,または「不 変の真理」である,予定・意向・運命などとして定まっていると話し手が見 なす場合である。また,事柄を受け止める用法のノダ文は相手の見解に対し て反対しない態度を示し,逆に事柄を伝える用法では相手の反論を受け付け ない態度を示す。ノデハナイ文・ノデハナカッタ文は「誤った考え」を取り 上げて却下する発話に限って用いられる。ノカ文による質問は,話し手はそ の内容について判断しない,聞き手に判断を任せるという解釈を生じる。 当為用法のノダ文は行為指示を表す。ノデハナイ文は行為すべきでないこ とを表す。ノダッタ文とノデハナカッタ文は,それぞれ過去の実行されなかっ た行為と実行された行為とについて望ましさを表現する。 ガ節でのノダの使用は必ずしも新情報の提示を表すわけではない。従属節 においても主節のノダと類似した効果が観察される。カラ節でノダを使用す ると,カラの命題レベルの用法は失われ,節の内容が「改めて問わない所与 の事実」として提示されるようになる。ナラ節でノダを用いると,条件判断 が一般的でなく限定的な,発話の状況における一回的なものとなる。 ノダ表現の信念用法は,その内容を新情報として受け取る人にとって,認 知的にどんな意義があるかについて話し手の意図を表現していると解釈され ることがある。文脈上に解説すべき疑問がある場合,ノダ表現の内容が解説 づけとしての意義を持つと解釈される。そうでない場合,受け取り手にとっ て興味深いとか,驚くべき・喜ばしいといった特定の感情が生じるという意 図の表現として解釈されることがある。

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