研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第14号

FONT SIZE:  S M L

葉霊鳳に関するこれまでの評価について

余, 迅

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/57702

Abstract

葉霊鳳(1904-1975)は、創造社の中堅社員として、よく海派文学の代表者と考えられているが、日本で書かれた葉霊鳳に関する論文は、筆者の知る限りでは非常に少ない。葉霊鳳研究を推進するため、本論文は、中国における葉霊鳳への評価を、20~30年代、80~90年代、21世紀以後に分けながら、彼に対する評価が否定的なものから、肯定的なものへと変わってきていることを紹介した。中国では、魯迅によって、「年若くみめ美しくして、歯白く唇紅くなる」という否定的な評価が与えられてから、それが葉霊鳳評価のよりどころとなった。80~90年代、葉霊鳳の作品が再評価され、特に性愛小説や書評などが高く評価された。しかし、「反逆者」・「売国奴」という人々の心に残された深いイメージが、日本における葉霊鳳研究にも影響を及ぼした。また、あくまでも題材的に社会性があるかどうかという点が葉霊鳳を評価する際の基準となっていることは、現在に至るまで変わっていない。葉霊鳳は、小説家であると同時に、優秀な画家である。近年の海派小説研究は、葉霊鳳作品におけるデカダンス、また西洋文学の受容に注目しているものの、葉霊鳳と絵画との関係については本格的に論じていない。よって、本論文の後半で、葉霊鳳と絵画の関係について少しだけ触れ、蕗谷虹兒の受容をめぐって、葉霊鳳小説における絵画的要素「フレーム」に着目し、テクストの再考を試みた。葉霊鳳小説の中には、フレームの形態との類似が看取できた。また、フレームによって、語り手と登場人物、現実と幻想が切断され、不思議な「夢世界」が生み出された。

FULL TEXT:PDF