日本の高齢化と小規模多機能ケアの実践 : 札幌市のNPOの事例調査より
郭, 莉莉
Permalink : http://hdl.handle.net/2115/60582
JaLCDOI : 10.14943/rjgsl.15.l253
KEYWORDS : 高齢化;小規模多機能ケア;介護系NPO
Abstract
日本では,4人に1人が高齢者という超高齢社会が到来している。1963年
の「老人福祉法」の制定から,日本の高齢者福祉は50年以上の道のりを歩ん
できた。急速な高齢化の進行や家族形態の変容を背景に,介護サービスを始
めとする高齢者福祉の重要性が高まっている。一方,大規模施設の集団的ケ
アへの反省から,1980年代後半に都市の民家などを活用し,高齢者の日常に
即した柔軟なケアを行う小規模多機能施設が,自然発生的に生まれ,1990年
代以降,こうした施設の展開が広がりを見せている。小規模多機能施設は,
工学や社会福祉学,社会学などの分野から注目を集めており,これまで,居
住空間やケアの質,運営主体の特徴などの側面からその事例が検討されてき
た。
本稿は,市民による草の根の活動から生まれた小規模多機能ケアの実践に
ついて,認知症高齢者が中心となっている下宿施設や通所介護などを運営す
る札幌市のNPO法人「在宅生活支援サービスホーム花凪」の事例を中心に分
析する。そこで実践されているケアの特徴は,①小規模でゆとりある生活リ
ズム,②家族的な介護,③生活の主体者としての暮らし,④高齢者の社会参
加・交流支援,の4つにまとめられる。こうしたケアによって,高齢者は豊
富で多様な人間関係の中で,「自分らしい」生活を再構築している。また,「花
凪」は在宅の高齢者の支援だけでなく,イベントの主催などを通して,地域
住民の交流も促進しており,地域福祉の一助となっている。「花凪」のような
小規模施設は,資金面や運営面において苦慮しているが,施設代表者の高い
志と献身的な努力,小規模ケアに対する職員の理解と意欲によって支えられ
ている。
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