研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第15号

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高齢者の主観的健康と身体的・精神的・社会的資源について : 全国調査データの計量分析

横山, 忠範

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/60586
JaLCDOI : 10.14943/rjgsl.15.l289

Abstract

本稿の課題は,「主観的健康感と身体的・精神的・社会的資源にはどのような関係が見出されるのか」という問いに,高齢者(未高齢・前期高齢・後期高齢)の3層と,さらに男性・女性別に焦点を当て,日本版General Social Surveys(JGSS-2010)の探索的分析に答えることである。知見は以下のとおりである。「生活を楽しむ」「活力にあふれる」の精神的資源に関して,主観的健康感の良い前期・後期高齢者が高い有意を示し,未高齢者(55~64歳)は有意を示さず,層差がでた。また,男女別の分析を行ったところ,「配偶者に対して」「クラブ等の参加(宗教団体)」は,有意の有無および高低が男女別により違った結果を示し,社会的資源(ネットワーク等)の性別差があきらかになった。全体を通し高齢者層別・男女別かかわらず共通して「生命の予後に対する予測性の高い主観的健康感」と高く有意になったのは,精神的資源である「活力にあふれる」である。社会情動的選択論,すなわち,「高齢になり残された時間が限られてくると悲しいことより楽しいことを思い出しやすかったり,悲観的な刺激よりも楽観的な刺激に対して注意を向ける」のような努力が,よい心の健康をつくるためのノウハウの一つかもしれない。

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