応用倫理 - 第6号

工学教育の変革に資する技術者倫理教育の研究

比屋根, 均

Permalink :  http://hdl.handle.net/2115/60903
JaLCDOI :  10.14943/ouyourin.6.15

Abstract

技術者倫理は多義的で、日本においても様々な主張が並存する。しかし、日本の工学教育に求められているのは技術者教育への転換であるから、この課題により適した技術者倫理の内容であることが望まれる。工学教育には、技術者倫理、エンジニアリング・デザイン(構造化されない問題の解決)、コミュニケーションの三つの弱点が指摘されており、それぞれ独立した課題として別々に取組まれる傾向にある。しかし、これらは従来の、一般原理を最上位に置き、具体的な問題解決を最下層に置く知識の階層性を前提とした、「技術プログラム」教育に起因する同一の問題の諸側面として把握すべきであり、それらは関連している。この弱点を克服した、コミュニケーションとエンジニアリング・デザインの基礎を培うような技術者倫理教育は、次のような内容を含むことが望まれるだろう。すなわち、技術者の実践生活と学生生活との違い、コミュニケーションの難しさの根源としての倫理や価値の非斉一性、科学・技術知識の正しさの限界とそれを超えていく方法としての試行錯誤、創造とルールの関係、現実に正しく向き合うための方法論、諸価値基準、そして技術の内的合理性と外的合理性の両方から決まる安全の考え方、である。


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