研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第16号

FONT SIZE:  S M L

有島武郎『クララの出家』論 : 越境するセクシュアリティ

張, 輝

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/63921
JaLCDOI : 10.14943/rjgsl.16.r101

Abstract

有島武郎の「クララの出家」は発表されて以来、クララの聖女という位置付けと過剰な性欲描写の衝突が注目され、争点となっている。霊肉一致と聖・俗の二択一の解釈はいずれも、クララの性的指向の変化を看過した読みであると言える。つまり、夢におけるヘテロセクシュアルな欲望以外に、クララの同性に対する愛欲も描かれているためである。作中では、夢という空間は異性愛の暴力性を露呈させる装置として機能しているにほかならない。セクシュアリティの規範から逸脱し、夢から現実世界への越境はクララのセクシュアリティの越境と見ることができる。「クララの出家」はジェンダーの曖昧さが 呈示される有島のほかの作品と一脈相通じる面がある一方で、有島武郎文学におけるジェンダー・セクシュアリティの越境を達成している。

FULL TEXT:PDF