タイ学生の政治意識・行動 : 政治的有効性感覚・政治参加を中心に
シリヌット, クーチャルーンパイブーン
Permalink : http://hdl.handle.net/2115/63923
JaLCDOI : 10.14943/rjgsl.16.l187
KEYWORDS : 政治意識;政治的有効性感覚;政治参加
Abstract
近年,タイにおいて若年層とくに大学生による政治に対する意識―行動が
低下し,政治への関心の減退に関する議論がメディアや研究者によって指摘
されてきた。本稿では,このような状況が問題視されているなか,政治的有
効性感覚及び政治参加に焦点を置いて,その実態や特徴の考察を試みた。そ
の結果,政治参加という点では,政治的問題の解決には,選挙以上の行動を
行わない傾向が見られた。その理由として,現代の政治の巨大化,複雑化か
らくる無力感があると見られる。政治的有効性感覚では,自分の行動は国の
政治に直接影響を与えられるといった内的有効性感覚は強いが,政治への信
頼ともいえる外的有効性感覚は全体的に弱い傾向が見られた。政治システム
や政治家への失望や不信感が学生の外的有効性感覚の弱さの要因だと思われ
る。また,学生たちの間では,以前と変わらず,国民より学生である自分こ
そ国の政治への影響力が強いといった考えを持っているという傾向が見られ
た。現在,学生は小数のエリート層の立場から離れたが,そのエリート意識
は学生の考えの中に継承されている。
また,メディアとりわけソーシャルメディアが,情報の発信,運動体の動
員,活動形態の拡大などタイにおける政治全体に影響を与えていることが明
確になった。しかし,メディアの信頼という点では,テレビが一番信頼され
ており,その次は新聞,インターネットの順である。そして,政治参加・政
治活動を直接促進するものとして,テレビが挙げられる。このようなことを
考えると,テレビや新聞といった典型的なメディアは政治情報や知見を受容
するために,信頼性を持ち有力なメディアであることが分かる。
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