北海道歯学雑誌;第37巻 第2号

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胚性幹細胞を用いた血管形成メカニズムの解明

田村-辻, 潔美;田村, 正人

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/65513

Abstract

血管形成は,血管内皮細胞が増殖・分化し,出芽・伸長・分岐・管腔形成といった複雑な形態変化を経て進行する.その後,血管内皮細胞の外側を血管壁細胞が取り囲むことで成熟した血管となる. 胚性幹細胞(ES細胞)は,浮遊培養を行うと細胞が集合して胚様体と呼ばれる細胞凝集塊を形成する.この胚様体の中では,血管内皮細胞を含めた様々な種類の細胞分化や細胞間相互作用が起こる.そのため細胞・組織レベルでの発生過程のモデルとして解析されている1,2).OP9細胞は,マクロファージ刺激因子(M-CSF)に遺伝子異常を持つ骨大理石病マウス(op/opマウス)の新生仔の頭蓋冠から樹立されたストローマ細胞株であり,高い造血支持能を持つ3).このOP9細胞をフィーダー細胞としてES細胞と共培養することで,血液細胞だけでなく血管細胞(血管内皮細胞,血管壁細胞)への効率的な分化誘導を行うことができる.また,タイプIVコラーゲンをコートしたプレートを用いることで,ES細胞から血管・血液細胞への無フィーダー培養系による分化誘導が可能である4).本稿では,血管細胞の増殖・分化と血管形成プロセスについて,ES細胞を用いた研究を中心に紹介する.

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