研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第17号

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数量詞に後接する「も」の用法に関する分析

稲吉, 真子

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/67980
JaLCDOI : 10.14943/rjgsl.17.l157

Abstract

日本語では,数量詞の接続構造において,数量詞が遊離した構造が無標とされる。加えて,数量詞に後接する副助詞の意味的関与が大きいという点も特徴的な点の一つとして挙げられる。本稿では,数量詞に「も」をはじめとする副助詞が共起している例について,実際の運用に着目しながら分析を行う。数量詞の運用には推意が伴い,それには尺度に関与するScalar Q-Implicature(尺度のQ推意)が関与する。しかし,英語と日本語では構造や語彙が異なるため,先行研究の定義をそのまま応用することはできない。特に,日本語では副助詞の意味に基づき推意が発生するため,副助詞ごとの特徴を分析する必要があると言える。これについては,さらに「話し手の想定」と「話し手の評価」という観点を加えることで,より詳細な分析を試みる。まず「話し手の想定」とは,当該の値に対する事実的な叙述,判断であり,想定は個人の知識や経験に起因する。一方で「話し手の評価」とは,想定に付加される話し手の主観的な多寡の価値付けであり,後者は副助詞の中でも,「も」や「しか(ない)」などの一部のものにしか生じない。これらには,当該事項に対する話し手の評価を伝達することで,それに伴う副次的な意味を推意として伝達する場合がある。一方で「は」などの副助詞は,当該の値に対し,話し手の想定による事実を提示するにとどまり,話し手の評価を伝達する機能はない。また,各副助詞と共起した場合,どのような意味が生じるかについては,当該の値の作用域という観点から,「も」,「しか(ない)」,「は」を比較,分析する。これに先述の「話し手の評価」という観点も加え,「作用する範囲」と「話し手の想定と実際の値」という観点から全体の特徴としてまとめる。

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