北海道大学演習林試験年報;第2号

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無機物からみたトドマツ水食材発生の一考察

氏家, 雅男

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/72651

Abstract

トドマツ (Abies sachalinensis Mast. ) は、北海道の森林総蓄積 535,500千m3の約20%、106,000千m3といわれる最大蓄積を誇る樹種である。北海道を郷土とするこの樹木は、適地適木の方針に従って、広く人工造林にも取入れられている。昭和57年度に北海道て実行された造林の面積およそ24,OOOhaのうち、トドマツは実に17,OOOhaを占め、2位のアカエゾマツ (3,400ha) 3位のカラマツ (2,200ha) を大きく引離している。しかしこのトドマツも、造林後10年余りを経過すると、豪雪地帯ては枝枯れ病が発生し、最近大きな問題となっている。一方、造林木については、低比重や水食材(ミズクイ材、 wetwood) など深刻な材質の問題が生じてきている。水食材とは、心材部に著しく高い含水率の部分を有する材で、針葉樹ではトドマツとくに生長のよい造林木に多く、エゾマツやカラマツにあまりみられない。一般に水食材は、生育の過程て樹幹凍裂をおこしたり、製材の乾燥に際しで乾燥むらや細胞に細かな亀裂が発生して強度を低下させる等多くの欠点をもっている。 この原因については、雨水侵入説、バクテリア説等いろいろ報告されているが、まだ結論をえていない。しかしいずれにしても、クローン間での水食材発生の差はなく心材内部に存在する死節付近や地際部に水食材がしばしば観察され、そこには無機物が多く存在している。 筆者は現在木材理学教室と共同で、トドマツ水食材を無機物の面から追究しており、その一部を本年11月の日本木材学会北海道支部大会で報告した。

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