北海道大学演習林試験年報;第3号

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間伐材を利用した新しい型の防風堆雪柵

東, 三郎;藤原, 滉一郎;笹, 賀一郎;奥谷, 昭

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/72673

Abstract

間伐材を利用した諸種の土木工作物が全国各地で考案され、具体的に供用されている。これは国内林業の窮情を救う一つの方法であるが、正当な方向へ発展していかなければ、一時しのぎの対策に止まるおそれがある。とくに工作物として要求されてきた耐久性について、木材は他の石材、コンクリート、金属に比して著しく劣ることから、このことを構造上の弱点としてとらえるだけでは、利用拡大に限界があるといわなければならない。 この点、防災林造成に不可欠の基磯工事として採用されている防風桓は、植栽当初の5-10年間に強力な効果を発揮し、その後は自然に消滅してもよい工作物であるから、間伐材の利用にもっともふさわしい対象であるとみることができる。しかし、従来の防風担には機能・構造・耐久性などの点で、なお多くの問題点が残されているために、当初の目標を十分満足させる段階にいたっていない。 一方、北海道の酪農地帯では、森林やササ生地を伐開して造成された広大な草地が多くなり、丘陵台地の縁辺部にエロージョンか発生し、風による刈取草の飛散により収穫率が低下し、牛群にとって必要とされる庇陰林が乏しいことから、新しく林帯造成を要求する声が高くなり、一般に風衝地で成林の困難な場所での造成技術を根本的に見直さな汁れはならないことになってきた。 たまたま、筆者らは農用地開発公団北海道支社宗谷丘陵開発事業の現地視察に際して、風衝地の林帯造成に積雪の有効利用が先決であると着眼し、新型の柵について検討した結果、標記の防風堆雪柵(通称三角フュンス)の設置を提唱することになった。 この件について、柵の原理と適用のうちとりあえず試作過程として昭和60年度日本林学会北海道支部大会において発表した。ひきつづき冬季の堆雪効果について観測準備をすすめている段階であるが、既に前記宗谷丘陵開発事業所は、現地での試験施工を開始し、また北海道大学中川地方演習林も中川町営草地の一角に同型の柵を配置し、観測態勢をととのえているところである。 したがって、本報告は新型柵の効用について仮説的段階に止まるわけであるが、原理と適用について概説し、諸賢のご批判を仰ぎたいと思っている。 本研究に当たって、北海道大学農学部林産学科木材加工学講座、北海道大学天塩地方演習林、同中川地方演習林、農用地開発公団北海道支社に多大のご協力を受けた。また、北海道大学農学部朝日田康司教授、梅田安治助教授に有益な助言を受けた。ここに記して深く謝意を述べるしだいである。

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