北海道大学演習林試験年報;第10号

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年輪情報の利用に関する研究

野田, 真人

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/72977

Abstract

樹木の年輪から得られる情報の利用が様々考えられている。その一つに年輪幅がある。年輪を観ると隣接する年輪の幅が徴妙に違っていることや、ある特定期間が異常に狭いという複雑な年輪の形成をしていることに気がつく。この年輪幅の広狭変動は樹の成長過程での環境変化が影響している。考えられる環境要因は気温、降雨量、日照などの気候要因と遺伝、樹間競争、病虫害、災害、傾向変動、それに最近は大気汚染などの非気候要因が複雑に作用している。言い替えれば、年輪幅にはその成育期の環境要因が広狭変動の形として記憶されていることになる。そこで気候要因に基づく成長成分と非気候成長成分とを巧く抽出できれば年輪幅の解析から成育していた年代の決定(Dendrochronology)や気候の復元(Dendroclimatology)が可能になる。 年輪が1年に1年輪形成されると仮定すると、年輪法の利点は年代が年の単位で正確に決められる特徴をもっており、他の年代決定法のような統計誤差を含む形とは違い、その年々の環境変遷を類推することができる。古木があれば、気象観測開始以前の古気候の復元も可能である。 この研究には①気候成長成分の抽出法②適用樹種の選択③環境(気象、大気汚染)資料の調査④多量の試料木の年輪計測を試行する必要があると考えられる。そこで、これまで得られた4つの課題に関する知見と今後の研究計画を紹介する。

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