北海道大学演習林試験年報;第11号

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バックホウを用いた林内小面積裸地の掻起し方法と天然更新

守田, 英明;北條, 元;奥山, 悟;藤戸, 永志

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/73168

Abstract

当演習林の天然更新補助作業は、1939年頃に現在の幌加参考林で開始された。ただし、現在場所は特定できない。その後、択伐林の伐採跡地を対象に1970年から稚樹刈出・枯殺剤散布・鍬による小面積な地表処理が試みられた。 天然更新補助作業が本格的に実行されるにいたったのは1972年であり、この年に林内に点在する裸地を対象に大型機械(レーキドーザ)による地表処理が初めて実施された。 地表処理地は、天然更新にゆだねるほか、植え込み・挿し木・人工下種等を試みてきた。この間、積雪を利用した階段状の地表処理なども試みられ、1989年からはバックホウによる小面積裸地の地表処理も併せて行われている。1992年現在の更新面積は約100haである。これまで行われてきた中川地方演習林の天然更新補助作業の技術上の問題点は以下の通りである。 現在、レーキドーザによる掻き起こしが天然更新地の大部分をしめている。天然更新が成功したとみなされるところは、ほとんどがダケカンバ等の小径木の一斉林となっているが、場所によってはダケカンバとトドマツの二段林状を呈しているところも見られる。しかし、全体としてはササが回復した場所やイタドリ等の大型草本で覆われてしまった場所も多く、天然更新が必ずしも成功したとは言えない処理地も多い。この要因としては、当初の地表処理が表土を残すことに重点をおいたこと等の技術上の問題や粘士質の土壌や地下水位等の立地上の問題が考えられる。 いずれにしても地表処理の強さや適地選定なと、今後検討すべき課題は多い。 春期には、レーキドーザを用い積雪を利用した階段状の地表処理も行われてきた。しかしながら、以前報告したように階段幅による大型草本のかぶりや作業が安全にできる傾斜角度の問題等技術上の検討すべき課題が多い。また、実行にあたっては作業の安全上の問題から実施時期の選択が難しいなどの問題が残されている。 また、これらの処理地では、いくつかの更新補助作業が行われているが、植え込み・挿し木・人工下種はいずれも、大型草本の侵入により成績の良くない場所が多い。したがって、現在は保育(下刈)等を実施し成長促進を図っている。 以上のように、中川地方演習林の天然更新補助作業は技術的にもいまだ多くの問題を抱えている。しかし、労働力問題を考えると、保育作業などの省力化は避けられず、今後は、天然更新を育林事業の中心に据えていく必要がある。また、近年当林では整理伐を中心にした択伐作業による立木密度の減少が著しく、これまで実施されてきた天然更新補助作業だけでは天然林の保全が困難となってきた。上記の問題を解決して行くための一つの手段として、1989年以来バックホウを用いた掻き起こしを始め、現在約8haとなっている。

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