北方森林保全技術 = Technical report for boreal forest conservation of the Hokkaido University Forests;第22号

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森林植物相のモニタリング : 森林下層における植生調査

浪花, 愛子;山ノ内, 誠;川本, 文明;森永, 育男

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/73142

Abstract

中川研究林の琴平地区・筬島地区は、「一般国道40号音威子府バイパス」計画の対象地となっている。このバイパスは森林内を通過する予定であり、建設工事が実施された場合、森林環境に多大な変化が生じる。森林の河川・土壌・大気等はもちろん、森林に生息する野生動物・植物等にも深刻な影響を及ぼす。とりわけ森林植物相については以下の影響が考えられる。(a)植物体の消失・減少 高規格道路建設工事に伴う伐採や土地の消失(切土・盛土)により、植物体自体が消失・減少する。(b)森林土壌の除去・攪乱 高規格道路建設工事に伴い森林土壌が除去・攪乱される。すると埋土種子の除去、植物体生育基盤の変質が生じる。これらの環境変化は、種子の定着や生長の段階に影響を与える。(c)外来植物の侵入 車の交通量の増加に伴い、車両に付着した外来植物の種子が落下し、森林内に侵入する機会が増加する。また、法面保護のために導入された外来植物も、森林内に侵入する。(d)環境条件の変化による植物相の攪乱 夜間の照明、排気ガス等、生育環境の変化によって森林植物へのストレスが増大する。また、周辺の微気象の変化により林内・林床が乾燥し、種子の定着阻害や樹木の立ち枯れが考えられる。 さらに森林植物相の変化は、それを餌資源とする生物にも影響を及ぼす。森林生態系を維持していくには、森林植物相の保全が重要である。中川研究林では、高規格道路建設が自然環境へ与える影響を明らかにすることを目的として、1997年より様々な調査を実施している。森林植物相に関しては、森林内微気象・森林上層植物(主に樹木)・森林下層植物(主に草本)のモニタリングを実施している。これらのモニタリングは、高規格道路の工事前・工事中・工事後に分けて森林植物種の構成・個体数の推移を長期に渡って把握する計画である。この調査で得られた資料が、森林生態系の保全を考えていく上で重要な手掛かりになる。

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