北方森林保全技術 = Technical report for boreal forest conservation of the Hokkaido University Forests;第32号

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開放系CO2増加実験(FACE:Free Air CO2 Enrichment)による森林樹木への高濃度CO2の影響評価:札幌実験苗畑の例(2002-2013)

小池, 孝良;渡辺, 誠;渡邊, 陽子;船田, 良;佐野, 雄三;高木, 健太郎;日浦, 勉;笹, 賀一郎;佐藤, 冬樹

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/73038

Abstract

樹木は多量の炭素を蓄積する巨大な組織(幹:シンク)をもち、地球上の炭素循環を考える上で重要な植物グループである。光合成作用の結果、固定した炭素から幹を造り光合成器官である葉をより光環境の良い場所へ配置することで自らの環境を変える。また、樹木は近年急上昇している大気CO2濃度など、さまざまな環境変化に順応して生き抜いている。1997年12月に採択された京都議定書への対応もあって、進行する高CO2環境に対する森林樹木の応答を至急解明する必要性が唱えられた。このような考えは文部科学省の「人・自然・共生プロジェクト」に一部採択され、2003年から札幌研究林において苫小牧、天塩研究林の支援を得て、落葉樹を対象にした開放系大気CO2増加(FACE : Free Air CO2 Enrichment)実験を開始した。さらに「分子生物学から個体生理、そして地球モデルへとスケールを変えてCO2への応答を探る」という新学術領域研究に採択されたことによって、北大FACEはさらに5年間継続でき、成果に普遍性を与えることが出来つつある。野外の操作実験からは5~10年程度継続した研究の結果でなければ、変動の大きい野外での傾向を論じることは出来ない。従来の研究は、制御環境で得られたデータを基礎に予測値を与えてきた。しかし、本研究は野外環境で実施することに意義がある (小池 2010)。なぜ、精密な制御が難しく膨大な予算を必要とする野外での操作実験を行う必要があるのかを、まず述べたい。

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