北方森林保全技術 = Technical report for boreal forest conservation of the Hokkaido University Forests;第33号

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天塩、中川研究林におけるテシオコザクラ、オゼソウの分布調査

伊藤, 欣也;高橋, 廣行;早柏, 慎太郎;奥田, 篤志;和田, 克法;古和田, 四郎;小池, 義信;椿本, 勝博;大岩, 健一;佐藤, 博和;宮崎, 徹;大岩, 真一;岡, 翼;菊地, 真也

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/73005

Abstract

地球上のある特定の地域にしか生息しない希少な地域固有種の生態について深い知見を得ることは、その生物の保護・保全策を講じる手がかりが得られるばかりでなく、周辺地域の生態系の仕組みを理解する糸口や地域住民の郷土愛、時には経済効果といった複数の恩恵が得られる可能性を秘めている。天塩研究林、中川研究林が位置している北海道北部の蛇紋岩地帯には、おもに崩壊している斜面上を中心にテシオコザクラ(Primura takedana)(図 1)、オゼソウ(Japonolirion osense)(図2)という2種の希少な多年草が生息している(舘脇,五十嵐 1971)。これら2種の存在は周辺地域の住民にも広く知られており(伊藤 2010)、天塩研究林が位置する幌延町ではテシオコザクラが「町の花」に指定されていること(新幌延町史編さん委員会 2000)、2種の開花期に群生地の見学会が開催されている(伊藤 2010)ことから、地域のシンボルとして一定以上の認知があることを示唆している。しかし、これら2種の生態について判明していることは形態(Tatewaki 1928; Nakai 1930)や繁殖様式(津久井 1995; 津久井 1996)、遺伝的な分類(Fuse,Tamura 2000)、ごく限られた区域内での生育条件(Saito 1970)といったミクロな視点の研究や報告に限られており、地域固有種として最も基礎的な情報のひとつである地理的な分布についてはほとんど明らかにされていない。そこで本調査では2種のおもな生息地と想定される天塩研究林、中川研究林の8本の河川流域において、具体的な分布を明らかにした。

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