北方森林保全技術 = Technical report for boreal forest conservation of the Hokkaido University Forests;第33号

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苫小牧研究林における衛星検証サイトの作成

中路, 達郎;鷹西, 俊和

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/73000

Abstract

人工衛星や航空機による地表の遠隔観測(リモートセンシング)は、森林を取り巻く様々な環境要因の変化やその影響を面的に把握する手法としてこの十~二十年ほどの間に飛躍的に利用されるようになってきた(加藤 2004、久米・大政 2014)。特に人工衛星では、搭載されているセンサーの性能が年々向上しており、日本の人工衛星でも数~十mの高空間分解能の可視-近赤外画像の撮影(AVNIR-2※)や立体構造の計測(PALSAR)がされており、国外では従来の航空機観測に匹敵する1m空間分解能の商業衛星も存在する(米国GeoEye-1など)。このようなリモートセンシング技術の高性能化は森林生態系の研究や広範囲の森林の維持管理を行う我々にとって歓迎すべきものであるが、その一方で、それらのデータがどの程度信用でき実利用できるかについては科学的に検証していく必要もある。従来の森林を対象としたリモートセンシング研究の多くは、個々の対象地における地上観測データ(樹高や生産速度など)と衛星データの関係性を調べ、それをもとに年変動や空間変動を扱ってきたが、地域スケールやグローバルスケールの地上検証は決して多いとは言えない。さらに、連続的な地上データをもとに多様な(マルチスケール・マルチファクトの)衛星で相互比較が可能な地上検証サイトはほとんどないのが実情である。最近、米国では地上検証ネットワークの構築を開始し、南北20か所の地上生態系研究サイトを国内に設置し(National Ecological Observatory Network, NEON)、航空機リモートセンシングとのリンクを精力的に進めている。しかしながら、このような試みは他の地域においてはなされておらず、今回、日本の研究者によって、生態系研究にかかわる人工衛星の地上検証サイトネットワークを日本国内に設立することになった(JAXAスーパーサイト500, Akitsu et al. 2015)。この検証サイトネットワークでは、生態研究が精力的に行われている日本国内の代表的な植生(常緑針葉樹林、落葉広葉樹林、落葉針葉樹林、水田)を有する研究サイトに500m×500mの25ha調査プロット(以下500mプロット)を設定する。500m四方のエリアは全球高頻度観測が可能な中分解能衛星(米国MODIS、日本GCOM-C等)の1画素が確実に収まる広さである。プロット内では、気象条件や光学プロファイルといった衛星データ検証用のデータとともに、バイオマス量、葉量(葉面積指数LAI)、樹種構成などの生物データを統一手法で観測する。それを長期間継続し、解析することで、さまざまな衛星のデータ精度検証を行うと同時に利用アルゴリズムの開発を推進することを目的としている。北大研究林では、計画開始段階の4サイトのうち2サイトを担うことになった。これは北大研究林が平坦均一大面積の森林を豊富に有すること、良好な研究施設環境と研究支援体制が整備されていること、JaLTERやAsiaFluxなどの研究者コミュニティに深く根ざしていること、そしてこれまでのJAXAとの協力実績が高く評価されたためである。常緑針葉樹林サイトは雨龍研究林、落葉広葉樹林サイトとして苫小牧研究が各候補地となっている。本報では、2014年に設置した苫小牧研究林500mプロットの概要と作業内容について報告する。 ※現在は運用期間が終了

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