北方森林保全技術 = Technical report for boreal forest conservation of the Hokkaido University Forests;第34号

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天塩川水系琴平川における治山ダムのスリット化にともなう魚類相の変化

馬谷, 佳幸;奥田, 篤志

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/72989

Abstract

北海道大学中川研究林は比較的急傾斜地が多く、天塩川水系の大小山地河川(天塩川支流)が流れている。また、総面積の約39%にあたる約7,500haが土砂流出防備保安林もしくは砂防指定地となっており、林内の河川では過去長期間にわたって治山および砂防工事が行われてきた(藤戸ほか 1992)。中野ほか(1995)は北海道大学天塩・中川研究林の河川で魚類相やその個体数を調査し、治山ダム等の河川工作物が魚類の上流への移動を阻害して魚類分布に影響を及ぼしていることを指摘した。当研究林内を流れる琴平川(旧名: アユマナイ川)流域は、土砂流出防備保安林に指定されており、上川支庁(現: 上川総合振興局)によって3基の治山ダム(下流側から第1-3治山ダム)が設置されている。また、現在、一般国道40号音威子府バイパス(音威子府-中川間)が、北海道開発局旭川開発建設部によって琴平川流域を縦断するルートで建設が進められている(2007年度着工、2018年度併用開始予定)。このバイパス建設にともなう琴平川流域整備計画に関連して、当研究林は上川支庁に対して、魚類の移動確保等、本来の川の機能回復を要望した。その結果、第1、2治山ダムにはそれぞれ魚道が新設され、2013年度に第3治山ダムはスリット化された。このような河川工作物の改良が行われた場合、生態系に対する効果を検証することが重要である。一方、当研究林では、バイパス建設が自然環境に与える影響を長期的にモニタリングする目的で、着工以前より自然環境調査を実施している(池上ほか 2004)。その調査のひとつとして魚類相調査があり(以下、R40魚類調査)、1999年より5河川10地点で魚類の種組成と群集構造を調べている(金子ほか 2005)。琴平川では、第3治山ダム下流域の5地点で調査を行っているため、第1、2治山ダムの魚道設置前後の魚類相も把握している。しかし、第3治山ダムより上流域の魚類相はこれまで調べられてこなかった。そこで本調査では、第3治山ダムの上流においてスリット化前後の魚類相の把握を行い、スリット化の効果を検証した。

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