經濟學研究 = The economic studies;第69巻第1号

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商業信用の形態と利子 : 貨幣貸借の理論領域

海, 大汎

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/74894
KEYWORDS : 商業信用;貨幣貸借;利子

Abstract

従来の利子論では,現金を直接貸し借りする関係を前提にして利子の生成を論じてきた。その意味では,K.マルクスによる貨幣資本家対機能資本家も,宇野弘蔵による銀行資本対産業資本も,いずれも同様な前提に立っているといってよい。しかしながら,マルクスの利子生み資本論に対する宇野の批判の骨子は,資本主義的信用関係は商品の売り買いを通じて成り立つものでなければならないという点であった。すなわち,その信用制度論の刷新は,利子の生成が現金を直接貸し借りする関係にではなく,商品の売買関係によってはじめて明らかになるとした点にあった。とはいえ,宇野学派の原理論研究における利子の解明は概して,商品を信用で売買する個別資本間の関係に基づきつつも,その概念規定においては,現金を直接貸し借りする関係だけを想定しているように見える。しかし,このことは,商業信用の形態についての不明確な理解をもたらすだけでなく,利子の生成の発生論的根拠を不明瞭にする根因となっているように思える。本稿は,こうした問題意識に基づき,商業信用の形態と貨幣貸借のメカニズムとの関係を把握し直すことで,利子の生成を発生論的に解明することを試みたものである。

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