基督教学 = Studium Christianitatis;No.54

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タイナト版エサルハドン王位継承誓約文書刊行後における「ヨシヤ改革」についての研究 : 「エサルハドン王位継承誓約文書」の「申命記」への直接的影響関係再考

髙橋, 優子

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/75533

Abstract

本論文の目的は、タイナト版「エサルハドン王位継承誓約文書」(以下ESOD)の発見による新知見を受けて、当該文書と周辺状況がヨシヤの改革あるいは申命記改革と呼ばれる歴史的事象に与えた影響を再検討することである。既に研究史の再構成は別のところで行った。ここでの課題はESOD自体の研究や申命記自体の研究ではなく、ヨシヤ改革研究である。そして、その際「ESODが申命記に何らかの影響を与えた」という自明の事柄(それを積極的に評価するか消極的に評価するかに関わらず、両テクストに似た記述が見られることを否定する者はいない)や、両テクストの間の引用にあたって使用されることがある「交差配列」というレトリック自体を問題としているわけではない。あえて言うとすれば、そのレトリックに新しい意味を見出す試みである。 さてタイナト後の現在ヘブライ語聖書学の世界ではESODの申命記に対する影響関係を重要であるとみなす一部の研究者と、それに反対する研究者が激しく対立している。ESODの影響を過小評価しようとする研究者たちは、OralTraditionやレヴァント全体の文化など、特定不能の大きなカテゴリーにこの論点を吸収することに意を注いでいる。しかし筆者は、なお直接的影響関係を示すことは可能だと考える。それはテクストの形式的特徴を探ることで見出されるであろう。さらにESODと申命記の対応関係を再検討する必要がある。その際、渡辺和子の業績を参照することが必要条件となる。

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