北海道歯学雑誌;第40巻 第2号

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ラット口蓋腺の加齢変化に関する組織学的研究

谷脇, 裕人;高橋, 茂;土門, 卓文;山崎, 裕

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/77556
KEYWORDS : 口蓋腺;加齢;細胞増殖;分泌顆粒

Abstract

本研究はラット口蓋腺の加齢変化を組織学的に明らかにすることを目的とした.5~100 週齢のWistar系雄性ラットに5-bromo-2'-deoxyuridine(BrdU)を腹腔内投与後,4%パラホルムアルデヒド溶液にて灌流固定を行った.摘出した口蓋腺から通法に従ってパラフィン切片を作製し,ヘマトキシリン・エオジン染色,分泌顆粒の検索のために過ヨウ素酸シッフ染色(PAS)とアルシアンブルー染色(AB),膠原線維の検索のためにアザン染色(Azan)を行った.また,細胞増殖活性の検索のために抗BrdU 抗体,アポトーシスの検索のために抗cleaved caspase 3(Casp-3)抗体を用いた免疫染色を行った.電子顕微鏡的検索のため,動物を2%パラホルムアルデヒド-1.25 %グルタールアルデヒド溶液にて灌流固定後,口蓋腺を摘出した.通法に従って超薄切片を薄切し,透過型電子顕微鏡で観察した.腺実質は全ての週齢において基本的にPAS及びABに陽性を示す粘液性腺房細胞から構成されていた.50週以降では,腺腔の拡張した腺房がしばしば認められ,粘液性腺房細胞はPAS強陽性となった.5,10週では,口蓋腺後方部にPAS強陽性を示す少数の漿液性腺房細胞が観察されたが,50週以降では認められなくなった.間質には5,10週にAzanに弱く染色される結合組織が認められ,50週以降で増生しやや強く染まるようになった.BrdU免疫染色では,5週に陽性腺房細胞が多かったが,経時的に減少し,100週ではほぼ観察されなかった.Casp-3陽性細胞は全ての週齢で認められなかった.電顕的には,粘液性腺房細胞に大きな変化は認められなかった.間質には5,10週では膠原細線維が散在していたが,50週以降では密集し束状をなす膠原細線維が多くなった.以上の結果より,ラット口蓋腺では加齢に伴い,粘液性腺房細胞の増殖活性低下や分泌顆粒の性状変化,漿液性腺房細胞の消失,腺腔の拡張などの実質の変化と間質における結合組織の増生が起こることが明らかとなった.

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