科学技術コミュニケーション = Japanese Journal of Science Communication;27号

FONT SIZE:  S M L

BSL-4 実験室を巡るコミュニケーション : 日本における国立感染症研究所の事例

林, 真理

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/79098
JaLCDOI : 10.14943/95031
KEYWORDS : BSL-4;科学技術コミュニケーション;バイオセーフティ;市民参加

Abstract

本稿は,日本の国立感染症研究所村山庁舎で行われてきた高度安全実験施設(BSL-4 実験室)に関する2015 年から2019 年の科学技術コミュニケーション活動について分析する.同研究所は日本を代表する感染症研究施設であるが,歴史的経緯と社会的事情によって30 年近くにわたりBSL-4実験室の稼働を見送ってきた.しかし,この5年のあいだに,施設稼働についての議論が始まり,実際に特定一種病原体が運び込まれて,実験の準備が整った.同庁舎は,一部の近隣自治会,近隣施設,行政とのつながりを重視し,これらの特定のステークホルダーに対して,頻繁に,対話的なコミュニケーションを行ってきた.他方で,参加型で幅広い市民に届くようなコミュニケーションや,熟議型のコミュニケーションは,ほとんど行われてこなかった.村山庁舎の科学技術コミュニケーション活動は,双方向的ではあるものの,古いタイプの科学技術理解増進活動(パブリックアクセプタンス活動)と重要な類似点を持っている.結果として,一部の近しい関係者からは肯定的な反応を得ながらも,多くの人々からの重要な批判にさらされ続けてもいる.

FULL TEXT:PDF(本文)