研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第19号

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考慮両立論の擁護

本間, 宗一郎

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/79793
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.19.l65

Abstract

本稿は,決定論者が相互に排他的な複数の行為についての考慮を行なったとしても整合的な信念を抱けるということを,考慮中の行為を行うことが信念的に偶然であり得るということに訴えて擁護するものである。このことによって,考慮と合理性は決定論を信じることと両立するという考慮両立論が抱える大きな問題の1つが取り除かれる。まず,決定論者は相互に排他的な複数の行為についての考慮を行う際に,考慮中の諸行為を行うことができると信じることによって整合的でない信念を抱き,その結果合理的でなくなってしまうように思われるという問題について説明する。そして,考慮中の行為を行うことが信念的に偶然であるとはどういうことかを明らかにした上で,考慮中の諸行為を行うことができるという信念を,考慮中の諸行為を行うことが信念的に偶然であるというように解するならば,相互に排他的な行為について考慮している決定論者でも整合的な信念を抱けるということを示す。また,理想的には認識的偶然性の方が考慮両立論を擁護するという目的に照らすと望ましいが,限定合理性が課すような条件を満たしているならば信念的偶然性でも考慮両立論の擁護には十分だということと,R. クラークの挙げた例は認識的偶然性によって考慮中の諸行為を行うことができるということを解釈する上での問題とはならないことを示す。その後は,信念的偶然性に基づく考慮両立論の擁護に対する反論に応答する。具体的には,P. ヴァン・インワーゲンの提示した例には,考慮の因果的効力性についての信念を取り入れれば対処ができ,考慮中の諸行為を行うことができるという信念は因果的な非決定性についての信念だと解されるべきだとするE. ヘンデンの批判には,選択肢を選ぶという行為は決定論者でも現実の因果だと信じられるという仕方で応答できるということを明らかにする。

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