研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第19号

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叙述タイプにおける時間的限定性 : 日本語の可能表現を中心として

李, 娜

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/79821
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.19.l271

Abstract

本稿は,時間軸上における時間の限定性により叙述タイプを再設定することで,可能表現の意味用法や成立制約を考察したものである。日本語の可能表現は形式的な特徴や意味用法が主として研究されてきた。特に可能の意味用法に着目して,可能の原因により「能力可能」と「状況可能」に分類することが多い。能力可能に関わる動作主の能力は,恒常的に安定しているものもあれば,一時的な状態を表すものもある。また,状況可能の場合において,ある場面において時間が明示することを叙述するものが多いと思われるが,実際には事態の全体に関する一時的な状態を表すものもある。言語研究では,時間的限定性の有無によって,叙述を事象叙述と属性叙述に二分することが多い。しかしながら,この2種類の叙述タイプに全ての叙述文を分類できない。そこで,本稿は,状態を表すものに着目し,事象叙述と属性叙述の間にさらに完了状態と未完了状態という2つの範疇を設定することを提案した。このように,従来では不明瞭である状態を叙述する文を分類できるようになった。さらに,この分類に基づきながら可能表現の叙述タイプを考察した。分析した結果,属性の観点から時間的限定性がない総称的属性を表す能力は可能表現の意味の基盤であることがわかった。そして,能力可能と状況可能との関係が明らかとなった。このような意味基盤があるため,可能表現の成立制約及「能力可能/状況可能」以外の用法も新たの観点から解釈する可能性を示した。

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