研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第19号

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改編本『類聚名義抄』の掲出字体について

張, 馨方

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/79799
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.19.l283

Abstract

『類聚名義抄』は平安時代末期に成立した部首分類体の漢和辞書で,掲出項目を立てて配列し,項目の注文には字体注,音注,義注,和訓などが施されていて,日本語史において重要な存在である。『類聚名義抄』は原撰本と改編本の二種が存在し,原撰本『類聚名義抄』は図書寮本が唯一の伝本で,改編本『類聚名義抄』は,観智院本,蓮成院本,高山寺本,西念寺本,宝菩提院本などが知られる。このうち観智院本『類聚名義抄』は唯一の完本で,ほか五本はいずれも零本である。 原撰本図書寮本の最も重要な特徴は出典明示であり,それに比べて,改編本は出典を明示しておらず,漢字字体と和訓を大量に増補し,漢文注を大幅に削ったのが特徴である。多数多様な漢字字体を収録しているのは改編本『類聚名義抄』の重要な特徴である。(「字体」とは「書体内において存在する一々の漢字の社会共通の基準」石塚(2013)である。)改編本『類聚名義抄』は日本,東アジア,ひいては世界の漢字字体研究史上非常に重要な資料である。 ただし,これまでの改編本『類聚名義抄』の研究は音注・和訓などの視点から行われることが殆どであり,漢字字体を主眼とした調査は非常に少ないといえる。改編本『類聚名義抄』の漢字字体の記載は「掲出されるもの」(掲出字体)と「注文に含まれるもの」(注文字体と字体注記)に分かれている。本稿では,掲出字体に注目し(注文字体について筆者張(2017)では調査してきた。),改編本諸本の関係を明らかにすることを目指して,改編本『類聚名義抄』四本(観智院本,高山寺本,蓮成院本,西念寺本)の記載を比較分析する。

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