北海道歯学雑誌;第41巻 第2号

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破骨細胞の機能とRNA結合タンパクHuRとの関連

伊藤, 啓介;松田, 彩;北村, 哲也;養田, 稔;高橋, 智美;飯塚, 正;鄭, 漢忠;東野, 史裕

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/80688
KEYWORDS : 破骨細胞;HuR;ARE-mRNA;カテプシンK

Abstract

【背景】破骨細胞は骨吸収を行う細胞で,骨芽細胞などと共に骨のリモデリングに関与することが知られている. 破骨細胞の異常は様々な骨病変を引き起こすため,その分化や詳細な機能を理解することは,骨病変の理解および 新しい治療法等に発展していく可能性があり非常に意義深い.破骨細胞は,その前駆細胞からRANKLの刺激を受 けることにより分化し,その際,様々な分子を介したシグナル伝達機構が関与する.それらのタンパク分子をコー ドするmRNAにはAU-rich element (ARE) を持つmRNAが多い.AREはmRNAの分解シグナルで,mRNAの3 ’非 翻訳領域に存在する.mRNAは,通常転写後すぐに分解されるが,ARE-mRNAにRNA結合タンパクHuRが結合す ると,核外輸送され安定化される.HuRは通常核に局在しているが,分化刺激やストレス等を受けると,AREに 結合してmRNAと共に細胞質に移動する事が知られている.従って,破骨細胞の分化や機能にもHuRの核外輸送 やARE-mRNAの安定化が関与する可能性がある.  本研究ではラット頸骨を材料として,各部位の破骨細胞のHuR局在を検討し,破骨細胞の機能とHuRとの関連を 解析した. 【材料と方法】7 週齢および30週齢のオスのラット脛骨組織の連続切片を作成し,HEおよびTRAP染色を行い, HuRおよびカテプシンKタンパクの抗体を用いて免疫染色を行った. 【結果】7 週齢および30週齢のラット破骨細胞ではHuRが細胞質に局在し,骨形成の活性が高い部位では多くの破 骨細胞でHuRの細胞質局在が認められたが,骨形成活性が低い骨膜下の破骨細胞では細胞質のHuR発現が少なかっ た.また,30週齢ラットの破骨細胞の核にHuRの発現を認められなかった.破骨細胞の細胞質のHuR局在とハウシ ップ窩の形成の間には関係が認められなかったが, 細胞質にHuR発現を認めた多くの破骨細胞ではカテプシンKの 発現が認められた. 【結語】活性化されている多くの破骨細胞ではHuRが細胞質に局在し,その発現はカテプシンKを介した破骨細胞の 骨吸収能に関連があることを示している.本研究により,初めて破骨細胞の機能とHuRとの関連が明らかになった.

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