北海道歯学雑誌;第41巻 第2号

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電撃様疼痛の原因探索に難渋した二次性三叉神経痛の1 例

稲本, 香織;中川, 紗百合;松下, 貴恵;中澤, 誠多朗;坂田, 健一郎;羽藤, 裕之;渡邊, 裕;山崎, 裕

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/80692
KEYWORDS : 二次性三叉神経痛;電撃様疼痛;慢性歯槽骨炎;カルバマゼピン

Abstract

電撃様疼痛の原因探索に難渋したが,最終的には慢性歯槽骨炎による二次性三叉神経痛と考えられた1例 を経験したので報告する.  患者は80代女性.骨粗鬆症でアレンドロン酸を4 年間服用中で複数回の骨折の既往があり,休薬せずに慢性歯槽 骨炎の原因歯である下顎右側第一大臼歯の抜歯を予定した.しかし転倒により受診が中断していた.4 か月後,痛 くて食事ができないと訴え当科再受診した. 同歯の周囲には軽度の炎症所見しか認めず抗菌薬やN S A I D sは無効, C R P 陰性であった.痛みは右側下顎神経領域に沿った電撃様疼痛であることが判明し,特発性三叉神経痛を疑い カルバマゼピンの投与を開始した.しかし,明らかな効果は得られずコンプライアンス不良が関係していることも 考えられたため,抜歯後の疼痛ならびに全身管理とカルバマゼピンの血中濃度測定を目的に入院下での治療を計画 した.下顎右側第一大臼歯は浮遊歯状態で周囲に骨硬化像を認めた.抜歯時,根尖部の舌側骨全体が茶色に変色し ていたが抜歯のみを施行した.術直後のCTでも,抜歯窩の舌側皮質骨の病変と広範な骨髄炎が認められ,アレン ドロン酸を長期服用していたことから,今後,骨吸収抑制薬関連顎骨壊死への移行も懸念された.しかし,抜歯 後2 日目から電撃様疼痛は消退,抜歯窩の骨露出は4 週後には消失し上皮化,術後9 か月目のCTでは抜歯窩に新 生骨が認められた.術後の良好な経過から電撃様疼痛の原因は,下顎右側第一大臼歯の慢性歯槽骨炎と考えられた.

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