公教育システム研究 = Public education system studies;第20号

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戦後における私立高等学校の自己変革 : 1970年代以降、とりわけ普通科コース制を中心として

村松, 憲治

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/82618
KEYWORDS : 私立高校;高校教育;普通科コース制;教育改革史;戦後教育制度理念

Abstract

 この論文は、私立学校の中等教育とりわけ高校教育について制度的に明らかにしようとするものである。とくにその教育内容に着目する。  私学の中等教育研究は教育法規に着目したもの、私学の公費の助成に着目したものについてはある程度研究の蓄積がある。しかしその教育制度・教育内容に注目したものは極めて少ない。とくに70年代以降、私学の中等教育は学校づくり、教育づくりにドラスティックな経験をしてきたが、資料や調査の少なさから、その過程を系統的に分析した研究はほぼ皆無である。  一方中等教育には多くの研究が存する。ただ元々、制度上、中等教育機関は中間で微妙な位置にある。さらに、歴史的にまず高等教育機関の「予科」的な性格に、その後初等教育機関との連続性が整備され、さらに専門教育が加わるといった複雑な経緯がある。戦後改革では単線化され、高校は中学の上に発展的に位置したが、それらを反映して運営方針は大きく揺れた。社会問題の大きな洗礼も受けた。今、戦後改革の理念がどうなったかも問題である。  さらに高校の公私関係も不明な分野である。戦後75年を経て、私立高校は現在約3分の1を占めるまで成長しており、公私関係が制度上の布置から出発してどう機能しているかは押さえるべき問題である。高校改革にも、制度的枠組みの改変とその枠内での教育内容の改善の工夫があるが、それぞれの成否はどうなのか、それへの対応に公私の特徴・違いはないのか明らかにすべきである。  本論文ではそれらへのアプローチを主として私学の「普通科コース制」をもってする。今日普通科の占める割合が私学では9割、公立7割と全体化している。ならば、その内部が解析されるべきだが、その内部システムであるコースは、文科省の学校基本調査から外れ、基本データもない。それは戦後10年経って、文部省によって政策に導入され、賛否を呼んだ経緯がある。今日、学校主導で一般化し、各学校、とくに私立高校は生徒確保を求め、その類型の開発に取り組み、30年以上にわたる。その推移はどうであったのか。  その構造、流れを明らかにすることは戦後教育改革の把握につながる。長く試みられてきた制度内の改良・分化に意味があったのか、本論文は、民間の資料も発掘しながら、そういった空白状況を埋めようと試みるものである。

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