北海道歯学雑誌;第42巻

FONT SIZE:  S M L

酵素細胞化学と連続切片による破骨細胞のゴルジ装置の立体復構

山本, 恒之

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/82746

Abstract

はじめに 立体復構は,顕微鏡とともに発達してきた古くから伝わる解剖学研究法である.概略を述べると,ある構造物を,ミクロトームという精密機器を使って一定の厚さで連続的に薄切する.このようにして作製した切片を連続切片という.染色した連続切片を撮影し,その構造物の縦と横の長さ,及び切片の厚みを算出して,実物と立体的相似形となるよう厚紙やワックス板を切り抜き順番通りに積み重ねる.この作業が立体復構であり,できた模型を復構模型という.切片の二次元観察だけでは理解が難しい構造物全体の外形や,内部の立体構造を把握することができるため,立体復構は解剖学の中でも特に発生学の分野で大きな役割を果たしてきた.口腔解剖学にいても,歯胚やエナメル小柱,及びエナメル芽細胞のトームス突起などの立体形態の研究に使われ1),歯科基礎医学の発展にも大きく貢献している.近年では,薄切技術や顕微鏡,及びコンピューターの進歩にり,画面上で細胞小器官までも復構できるようになった.なかでもゴルジ装置は,比較的簡単に顕微鏡下で確認できるため,多くの研究がその立体復構像を報告している2-9).これらの研究により,ゴルジ装置は細胞の機能が異なれば立体形態も異なることや,たとえ切片観察では遊離しているようにみえても,細胞内では連続して一体化した小器官であることが示唆されるようになった.実際にいくつかの種類の細胞で,ゴルジ装置は多孔性の一個の籠のような形態を示すことが明らかにされている8,9).破骨細胞は,同類の破歯細胞とともに歯科医学とは切り離せない細胞であり,基礎と臨床を問わず様々な分野で研究の対象になっている.形態学の分野においても,多くの研究者が破骨細胞の微細形態について報告しているが,ゴルジ装置の立体形態や立体分布について言及したものはない.おそらく破骨細胞は大きすぎ,連続切片を作製するのが困難であったのも一因であろう.著者は,酵素細胞化学と連続切片により破骨細胞のゴルジ装置の立体復構を試み,若干の知見を得たので紹介したい.

FULL TEXT:PDF