北海道歯学雑誌;第42巻

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一般歯科診療所における口腔擦過細胞診 : 口腔がん早期発見に向けて

北村, 哲也

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/82748

Abstract

はじめに 口腔がんは希少癌で,一般開業歯科医師は一生のうち1 回か2 回しか遭遇しないといわれていたが,がん情報サービスの統計によると2017年の口腔咽頭癌罹患者数は12年前と比較すると2 倍に上昇し,死亡者数も増加の一途を辿っている.この事実は一般の方はもちろん歯科医療関係者にもあまり知られていない.筆者は口腔病理診断医として口腔がんの診断を長年行い,多くの口腔がんに接してきた.どうしてここまで放置したのか,もっと早く手術できなかったのかと残念に思う症例をしばしば経験する.口腔は直視・直達できる臓器にも関わらず,なぜ口腔がんは早期に発見されないのか?進行がんの経過を探ると,2 つの原因がみえてくる.1 つは患者が自覚してから医療機関を受診するまでに時間を要していること,2 つ目は一般歯科診療所から高次医療機関への転院に時間を要していることである.口腔がんを考慮すべき患者が一般歯科診療所に来院した場合,強く疑わせるのであればもちろん早急に高次医療機関へ紹介しなければならないが,そうでない場合は投薬・経過観察が,あるいは良性病変,炎症性病変と判断されてなんらかの処置が行われる場合が多い.しかし,臨床経過を回顧的にみると,この経過観察期間や誤った処置が患者予後の分水嶺となったであろうケースに多々遭遇する.口腔がんは,進行癌であれば視診での診断が容易であるものの, 早期癌を視診のみで確信的に診断することは熟練した口腔外科医でも困難である.加えて,口腔がんの検査・診断する方法が十分に普及していない.そこで本稿では,一般歯科診療所でも口腔がんの早期発見が可能で,近年広がりをみせつつある口腔擦過細胞診,特に液状化細胞診についてご紹介する.

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