体幹・骨盤回旋補助による歩行支援および走行拡張
橋本, 光太郎
2020
Permalink : https://doi.org/10.14943/doctoral.k14141
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| 抄録 |
近年, 高齢化に伴う要介護・要支援者の増加が大きな問題となっており, 未然に防止することが重要となっている. 我々は要介護となる要因の一つである運動器障害に着目し, 人間が行う基本的な動作である歩行や走行を対象として, 体幹と骨盤の回旋運動から歩行を支援する回旋運動補助システムを開発しており, 日常的な運動を促し運動機会を増加させることで運動器障害の予防を目指す. 回旋運動補助では体幹と骨盤の間に相対的な回旋運動を与えることで歩行・走行時の運動を効率の良い動作へ改善する. 歩行・走行といったダイナミックな動作に対して補助を与え動作を改善するにあたり, 人間の現在行っている動作に合わせた補助を行う必要がある. そこで, 本研究では人間の歩行・走行動作に適応した回旋運動補助を与えることで歩行・走行を支援するシステムを構築する.我々が提案する回旋運動補助では制御系に拡張型周期入力制御を導入することにより,人間の動作周期に合わせた補助を適用可能としており, 運動周期の変化に応じて適切な補助力を与えられる. また, 制御パラメータの変更により補助力を運動に対して先行もしくは遅延する形で与えるよう調整が行えるため, 運動の促進もしくは抑制が可能である.本研究では, 上記装置を利用して回旋運動補助を実施するにあたり, Spinal Engine 理論にて提唱されている人間の上半身と下半身のエネルギフローに着目し, 歩行・走行運動中に発生するエネルギロスを, 装置による運動への介入にて一部補填することで, 運動規模を維持するために人間が投入していたエネルギ分を代替, 人間にとって負担が少なくなるよう補助を提供するシステムの実現を目的とする.まず, 回旋運動補助装置の設計・開発を行った. 歩行中に人間の体幹と骨盤の間で発生している運動を計測した結果, 回旋運動の他に前後屈, 側屈動作が行われており, これらの運動が制限された際には歩行の運動規模は縮小され, 負担が大きくなっていたため, 装置により運動に介入する際にはこれらの運動が制限されないよう, フレキシブルな構造とした. この装置に拡張型周期入力制御を導入, 脚の動きから歩行・走行動作を把握し, その動作に応じた補助を与える.次に, 回旋補助による効果検証のため歩行および走行実験を実施した. 実際に装置を装着し, 歩行または走行動作中に回旋補助力を与え, その際の運動の変化および表面筋電位を計測した結果, 歩行運動において高齢者歩容の改善効果および大腿筋, 大臀筋の負担低減効果を確認した. また, 力学モデルによる解析により歩行中のエネルギ損失を約1 割軽減し, エネルギ的に損失が少ない動作に変化したことを確認した.さらに, 走行動作への補助実験において, 回旋補助により上半身と下半身のエネルギフローの改善についてシミュレーションにて検証した. 今後, 回旋補助による走行動作の変化を表現するため, 走行運動の生成による検証が容易となるよう, 単純なモデルにて走行を表現する. 我々は, 質量とバネにて構成された1 リンクモデルで走行を表現するSLIP モデルをベースに, 回旋動作を表現できる拡張SLIP モデルを作成した. 作成したモデルよるシミュレーションにより, 走行中の上半身と下半身における角運動量を比較した結果, 回旋補助により角運動量差が約6.1%低減されることを確認した. また, 上半身と下半身の間で発生しているエネルギフローから, 理想的な走行を維持するための外部から投入すべき必要トルクを算出し, 開発した回旋補助装置の制御系が出力する補助トルクと比較したところ, 補助率は約5.6%となり, 回旋補助により低減された角運動量差の量と同程度であることを確認した. これより, 開発したシステムにより走行運動の改善が行えることが示唆されたほか, 拡張SLIP モデルを用いたエネルギフロー改善のための制御系設計手法の構築可能性を示した.
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