発効日の遅れを時給換算した値の四捨五入に関する問題 [Dataset] 2025年の最低賃金地方審議の答申状況についてのデータセット https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/95998 上記リンクの、データセットとして公表されているデータを四捨五入して利用する際の問題点とそれに関連した事項について、以下説明します。 【四捨五入の問題点】 上記リンクの、データセットとして公表されているzipファイルの中の eff_date.csvというファイルのeffinc_meyasuという変数では、たとえば北海道は、目安を1.465円、上回っています。 引上げ後の最低賃金は1075円、しかし、発効日の遅れを考慮した最低賃金は、1074.466円であり、後者を四捨五入すると1074円です。引き上げ後の額に比べ、1円下がっています。 北海道の発効日は10月4日です。10月1日よりも3日遅いです。しかしこれは審議が遅れたというより、それより早く発効しようとしても審議会の日程がその日しか組めなかったという事情はありそうですし、そもそも3日の影響は大きいとも思えません。それに、10月3日発効の東京・千葉などでは、四捨五入して、1円の目安割れは生じていません。1日違いで、こういうことが起きてしまいます。 そうなってしまうのは、1074.466円では0.466が0.5に到達しておらず、四捨五入では切り捨てざるを得ないからです。 この1円の誤差は、基本的には小数点以下の桁の数字が0.5に近いと生ずるものです。四捨五入をして整数にする、ということをしなければ、このような1日違いでの1円違い、が出てくることは避けられます(といいますか、小数点以下まで報告していれば、千葉は目安+上乗せと同額、北海道は目安+上乗せ-1円、ということではなく、少数点以下まで表示することになります)。 同じような1円の誤差が生ずるケースは、以下です。 (1)10月4日発効。目安越え(0円以上)だが、四捨五入をしてしまうと、引き上げ額が1円下がってしまうケース 北海道と同様の問題は、宮城・鳥取・兵庫で生じています。それを以下、2つに分けて議論します。 <目安越えが1円以上のケース> 北海道と同様の問題があり、かつ目安超えが1円以上である場合は、宮城・鳥取です。いずれも、10月4日発効で、目安を上回る引上げとなっています(目安超え)。ただ、その目安を上回る度合いが、四捨五入をすることで、最大で1円、下がってしまっています。上記の北海道でいいますと、64.465円の引上げですが、四捨五入すると64円、目安(63円)+1円ですが、実際には2円と判断してもよいところです。なぜなら、10月3日から1日だけ遅れただけで、1円の差が生じてしまっているからです。 <目安越えが1円未満のケース> 兵庫でも、1円の上乗せをしていますが、四捨五入の結果、上乗せゼロと評価されています。 兵庫については、四捨五入前の上乗せ額が0.474円であったため、目安超えでも目安割れでもない、と判断しています。 (2)10月3日発効のケース、目安割れだが1円未満か、目安通りと判断 10月3日発効の東京・長野について「目安割れは無い」と判定しています。これは、実際には1円未満の目安割れは起こしているものの、1円未満については目安割れとしないという基準を設けたため、目安割れを起こした都道府県数には含めず、目安超えでも目安割れでもない、としていました。 さらに、千葉は10月3日発効で1円上乗せです。こちらは10月1日から2日分の遅れにより、1円の上乗せが0.649円と評価されますが、これを四捨五入すると1円になるので、実際の上乗せと同額の64円引上げ(1円上乗せ)と評価され、四捨五入によるズレの問題は生じません。 (3)10月5日発効のケース、滋賀 10月5日に発効の滋賀は、1円の上乗せでした。10月3日より2日違いですが、1円の上乗せが、四捨五入により、0円と評価されてしまいます。 (4)上記以外で、四捨五入が1円の誤差がありそうなケース 上記以外で、発効日を考慮した調整の値が、小数点以下で0.5に近いため、1円の誤差が生じそうなのは、山形です。目安割れの金額が-4.51となっており、0.5に近いです。しかしながら、こちらは発効日が12月23日であるため、その日の周辺で1日違いの発効日の都道府県は無い状況です。そもそも1か月以上の後ろ倒しがあり、1日違いの意味は大きくなさそうです。 【目安割れ・目安越えの基準とその基準に基づいた報道等】 (1)上記の試算をもとに、目安を1円以上下回る場合を「目安割れ」と判断する基準を設け、目安割れになったのは25府県であったことを、以下の記事で紹介していただきました。 2025/9/19 毎日新聞 「最賃、実は秋田が最下位 10月からの1年間「991円」 発効予定日、3月末に遅れ」 https://mainichi.jp/articles/20250919/ddm/012/020/125000c 2025/9/27 産経新聞 「最低賃金大幅引き上げの「代償」 発効遅れ続出で広がる地域格差 現行審議方式の限界露呈」 https://www.sankei.com/article/20250927-5NVLQS2OXJLQ7N3JKOJGDDAGJE/ 2025/9/30 日本経済新聞 「最低賃金、25府県は年間手取り「目安割れ」 政治介入で上げ時期遅れ」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA248WV0U5A920C2000000/ ・データ作成者自身が『労務事情』(2025年10月1日号)に寄稿したコラム記事 「地域別最低賃金をめぐる審議をどう見るか~発効日の後ろ倒しが生じた意味~」でも、その点を記述しました。 『労務事情』のページ https://www.e-sanro.net/magazine_jinji/romujijo/b20251001.html 『労務事情』寄稿記事の著者版原稿は以下にあります(出版された記事とは細かい点で異なる部分があります。出版元の許可を得てレポジトリで公開させていただいています)。 http://hdl.handle.net/2115/96062 (2)さらに、上記(1)の目安割れの基準に加えて、目安を1円以上、上回った(目安超え)のは12道県であったことを、以下の記事で紹介していただきました。 2025/9/6  朝日新聞 「最低賃金、働く人への恩恵いつ? 高水準の引き上げ、発効日に地域差 https://digital.asahi.com/articles/AST9533XST95ULFA01MM.html?iref=pc_ss_date_article