研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第21号

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コピュラの定義からみる日本語の断定の助動詞

中村, 真衣佳

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/84006
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.21.l1

Abstract

本稿では,一般言語学における伝統的なコピュラの定義が日本語の指定・断定の助動詞と呼ばれる形態にも整合するか否かを検討した。その結果,「である」「だ」「です」のコピュラ機能が希薄である一方で,「なり」は現代語よりもコピュラの定義に近いことを指摘する。「主語と(動詞以外の)述語を結ぶ連結語(Pustet 2003)」「コピュラはどのような意味内容も加えない(Narahara2002)」というコピュラの機能にもとづき,「なり」「である」「だ」「です」を検討したところ,以下の結論に至った。連結機能については,構造的な統語的連結が中心的機能ではなく,主語と述語を意味機能的に結ぶことを指摘した。また,コピュラはどのような語彙的な意味内容も加えないという定義に関しては,古代語と現代語とでは振る舞いが異なる。「なり」は,述語に意味内容を加えない点でコピュラの定義と整合するが,現代語は,文体,話し手の心的態度,丁寧さや敬意といった社会言語学的要因を背景に形態の多様化が進んだことで意味的,語用的機能が生じていることを指摘した。したがって,現代語は古代語よりもコピュラ機能が希薄化したと結論づける。

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