研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第23号

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水準低下批判に対する反論 : Slogan に対する再考

徐, 晨倚

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/91084
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.23.l45

Abstract

本稿はDrake Parfitによる水準低下批判について分析し,先行研究による批判と筆者独自の批判を取り上げることで,水準低下批判(Leveling-Down Objection)およびその根底にあるSloganを批判し,平等主義を擁護した。水準低下批判はDerek Parfitが論文「平等か優先か」の中で論じた概念で,平等それ自体に価値があると考える目的論的平等主義への反論として考案されたものである。Parfitによれば,平等はそれ自体で価値を持つということは,不平等の消滅もそれ自体で価値を持つことを意味する。そのため,境遇の良い人の生活水準を境遇の悪い人のと同じ水準に下げること(水準低下)による不平等の消滅は最終的に悪い帰結をもたらすが,不平等が消滅し,何かしら道徳的善さが生じることになる。Parfitは目的論的平等主義はその批判を回避できないとし,代わりに優先主義を支持すべきだと論じた。しかし,水準低下批判及びその基礎にあるSloganのどれも理論的な基礎が欠けており,比例正義や非同一性問題をはじめとする反論に直面しなければならない。ゆえに,Parfitの平等主義批判は説得力のあるものではないと結論づける。

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