研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第23号

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博物館としての動物園のあり方 : 日本の法制度から見る動物園の社会的役割

陳, 曦

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/91088
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.23.l139

Abstract

本稿の目的は,日本の動物園に関わる法制度の歴史的変遷,そして先行研究が欠如している2013 年からの日本動物園水族館協会(JAZA)と環境省による動物園水族館法の制定に向ける動きを概観し,動物園が求められる社会的役割の変化を明らかにすることである。日本において,博物館法は,動物園を社会教育施設として位置付け,すなわちその機能と役割を規定する最も重要な法律である。1951年に制定される前から多くの反対の声があったにもかかわらず,海外と日本において動物園が博物館の付属施設として位置付けられていた歴史,そして古賀忠道と棚橋源太郎の努力の影響で,動物園は博物館法の対象となった。JAZAをはじめとする動物園関係者は,博物館法において動物園等の役割を明確に規定するように提言したが,2008年と2019年に行われた2回の博物館法改正の内容には全く反映されなかった。一方,JAZAと環境省は2013年から動物園水族館法の制定に向けて働きかけ,結果的に失敗したといえるが,動物園の社会的役割について国のレベルで議論を始めたことで,動物園の生物多様性保全という役割が動物園の所管を担う各自治体によって重視され始めるようになったことが分かった。

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