研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第23号

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博物館展示におけるコミュニケーション構造の変化について : 都道府県立歴史博物館を対象に

魏, 雯君

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/91089
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.23.l163

Abstract

本稿では,都道府県立歴史博物館の展示におけるコミュニケーション構造の変化を明らかにするため,博物館が展示利用者との関係をどのように認識してきたか,利用者の主体性を促すためにどのような展示手法を導入したきたかを考察した。研究方法は,これまで常設展示を全面改修した都道府県立歴史博物館を取り上げ,文献調査を通じて展示改修前後の変化を比較することである。調査の結果,地域の歴史・文化を理解させるための手段として展示を認識する傾向が続いているが,利用者と交流する場や利用者が主体的に活動する場として再構築しようとする動きが見られた。また,利用者の生活に関連した展示内容の増加,多層的な情報を提供する展示の増加,自由に選択できる動線を使用する展示の増加などの変化から,利用者が主体的で多様的な意識を持つ存在という認識が深まってきたと考えられる。しかし,実物資料を中心とする展示のような,利用者の主体性を促すことに効果があると考えられている展示については,その具体的な効果に関する調査研究が不足していることがわかった。そのほか,選択できる動線を使用した展示において,動線が利用者の展示体験に支障をきたしたことが明らかになった。それは,利用者の主体性がまだ十分に重要視され研究されていない可能性を示唆していると考えられる。

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