研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第23号

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包山卜筮祭禱簡における鬼神信仰

趙, 珊

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/91125
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.23.l211

Abstract

一九八七年に湖北省荊門市包山二号墓から,楚国の司法関係に関わる「文書簡」と随葬品の目録である「遣策」とあわせて,極めて重要な竹簡資料である「卜筮祭禱簡」が発見された。「卜筮祭禱簡」とは戦国時代の楚において,貞人(巫祝)たちが封君や世族の屋敷に招かれ,依頼者のために向こう一年間の安危の有無や,災いをもたらした祟りの所在を貞問した際,もし何らかの憂患が占断された場合に,それを解除するための祭品を捧げる祭禱案や,祭品を使わぬ「囟攻解」案などを提示した記録,およびその祭祷の実施記録を含むものである。本稿では,包山卜筮祭祷簡に登場した祭禱対象と囟攻解対象に注目して検討してみようとするものである。祭禱対象とは,供犠供物を捧げて儀式を行う必要がある神霊である。祭禱対象を主に地祇と祖先神(または墓主と血縁関係を持っている人鬼)としている。簡文には,よく「舉禱」「賽禱」「能(羽かんむりに能の字)禱」といったような祭祷名が見え,それぞれ特別な意味合いを持っているが,研究者によって異なる見解があり,まだ議論が続いている。供犠供物には動物の牛・豚・羊のみならず,玉,冠帯および衣服なども使われている。一方で,囟攻解対象とは,供犠供物を伴わずにして祟りを祓わせてくれる神霊である。本稿の主な研究目的として,これまでの研究を踏まえながら包山卜筮祭禱簡に登場した祭禱対象と囟攻解対象を新たに四つの範疇に分類して,その一つ一つの天神・地祇・人鬼・不明に属するものを考察し,かつ関連している歴史文献と出土資料を明らかにすることによって,より具体的な説明をしながら楚人の鬼神信仰の世界について探索してみようとするものである。

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