研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第23号

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日本語における再帰性の研究

黄, 銘君

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/91097
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.23.l269

Abstract

仁田(1982,2010)の研究では,再帰は,働きかけが動作主に戻ってくることによって,その動作が終結を見るといった現象と定義される。一方,仁田(1982),片山(2005)などが再帰動詞を下位分類しているが,食い違うところがある。具体的には,仁田(1982,2010)は再帰的な用法しか持たない,代表的な再帰動詞である「履く」,「脱ぐ」のような衣服の着脱をする動詞を「再帰動詞」と,普通の他動詞でありながら,そのうちの一つの用法として再帰的な用法を有する動詞を「再帰用法」と呼んでいるが,片山(2005)は語彙的再帰性に関して,仁田が論じたように再帰的にしか使えない再帰動詞は着脱を表す動詞だけではないとして,「得る」,「失う」のような動詞も再帰動詞の枠組みの中で捉えようとした。本稿はプロトタイプ論から再帰性の有効性を示すものである。また,日本語はフランス語,スペイン語など西欧言語とは異なり,接辞的な再帰代名詞が動詞につかないため,本稿では,日本語では形態上の再帰動詞がそもそも存在せず,語彙的な再帰用法はあるが,従来の着脱動詞や「浴びる」を再帰動詞として認める考えは不適切だと主張する。

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