研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第23号

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「ものだ」の意味用法についての一考察

張, 力丹

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/91099
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.23.l303

Abstract

本稿は,形式名詞の「もの」とコピュラの「だ」とが組み合わさったことによってできた「ものだ」から派生したいくつかの特定の意味用法を見直したものである。寺村(1984)で提示されている置き換えテストの適用性を確認することを通じて,〈本性,本質〉を表す「ものだ」は助動詞として捉えられるべきことを示した。形式名詞としての「もの」には照応性が認められており,文脈指示の前方照応か後方照応をなしていることに加えて,主語や主題が指示詞であれば,「二重照応」が生じてしまう。助動詞の「ものだ」に〈一般性〉〈当為〉〈反期待〉といった3つの意味用法があると考えられる。話し手が認識していることを一般的なものとして引き上げる〈一般性〉は,話し手が直接経験したことにとどまらず,知識として話し手に内蔵している現在と離れた昔のことを表すことも可能である。一方,相手の行動を言及せずに話し手が一般的に認識していることを提示することで相手の行動を促す〈当為〉と異なって,〈反期待〉は自分の期待や予想にズレが発生した相手の行動について直接言及する,あるいは感想を表出するものである。また,昔一時期に続いていたことを思い出す〈回想〉に,懐かしさのような情緒的な要素がポイントだと考えられるため,〈回想〉を〈反期待〉の下位分類に位置づけた。

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