研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第23号

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一方的で不成功なコミュニケーションとコミュニケーション分析における分析者の立場について : 『マイ・ブロークン・マリコ』を例に

数納, 風香

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/91108
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.23.l323

Abstract

本稿は,コミュニケーション分析における分析者の立場の再考と,それを踏まえた,一方的で,失敗しているにもかかわらず外部からは成功しているかのように見える「不成功」なコミュニケーションについての記述を試みるものである。そのための具体例としてマンガ『マイ・ブロークン・マリコ』を取り上げ,作品内のコミュニケーションを追いながら,実際には成立していない会話が成立しているかのように描かれていることを示す。また,作品内のコミュニケーションに直接参加することができない一方で登場人物と視点や注意を共有する読者,分析者の立場を考えるにあたってマンガ表現における「視点」の問題が重要であることを指摘した上で,映画へのアダプテーションによってマンガで描かれていた視点やコミュニケーションの在り方が変化していることに触れる。まとめとして,発話の受け手でありながら直接的な参与者である話し手や受け手とは異なる階層に立つ分析者の立場を考えるにあたって,必然的にその立場に立たされるフィクションを使用した分析は有用であり,またそれを踏まえた上で,「不成功」なコミュニケーションのようなものからコミュニケーション分析の新たな視点が生まれる可能性があることを指摘する。

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