北海道大学大学院教育学研究院紀要 = Bulletin of Faculty of Education, Hokkaido University;第118号

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へき地保育所の地域的存立過程 : 北海道標茶町・塘路ひしのみ保育園の事例から

長津, 詩織

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/52886
JaLCDOI : 10.14943/b.edu.118.1
KEYWORDS : へき地保育所;地域社会;地域交流;childcare center in remote area;community;local exchange

Abstract

本稿では,北海道標茶町の塘路ひしのみ保育園をへき地保育所として存続させてきた過程と背景を,保育者の視点から明らかにすることを試みる。へき地保育所をめぐるこれまでの研究では,へき地という地域の特徴を過疎という人口の問題に限定して捉えてきた。そのため,保育所と地域社会との密接な関わりは認識されながらも,子どもや地域住民に前向きな意味をもたらすものであることを示唆するに留まっていた。本稿ではへき地の特徴と事例地域の社会構造をふまえ,それらが保育所の成立に関わる仕組みを分析した。事例から明らかになったのは,へき地において,保育所は保育と就労支援のみならず地域住民の結節点としての役割も果たし,地域行事を支える機関の一つでもあることであった。へき地保育所とは,保育を受ける権利と,園児を地域住民として集団的に育てるというへき地社会の論理とが織り合わさる場であると考えられる。

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