長谷川雄太郎研究序説 : 『日語入門』諸本校異に基づいて
中村, 重穂
Permalink : http://hdl.handle.net/2115/61521
KEYWORDS : 長谷川雄太郎;日語入門;GDM(Graded Direct Method)
Abstract
小論は、清末期の日本人教習であった長谷川雄太郎(1865~1904)の日本語教科書『日語入門』の書誌学的分析と考察を目的とするものである。同書は、現在国内に草稿を含む6冊が存在し、うち5冊を校合した結果、506箇所の相違点が見出された。これらの殆どは改行位置の違いであり、その他誤植・誤記、脱字、句読点・符号・傍線・ルピの有無等があるが、文(章)の書き換えはない。
また、現代の文法シラパスの観点から指導項目を考察してみると、学習の初期段階で助詞を核とした構造を与え、その後、関連性のある機能や表現を提示し問答を行うようになっていることから、同書は会話力養成に力点を置くものと考えられた。
その上で、『日語入門』をGDMと関連づける劉(2005)の先行研究を検討し、GDMと結びつけるのは困難であることをGDMの指針に即して結論づけ、『日語入門』の構造的特徴として、content wordとstructure wordの区分と、structure wordの集中的提示の2点を挙げた。
最後に、今後の課題として、未確認の諸本の探索とさらなる書誌学的分析の必要性を述べた。
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