研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第21号

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初対面時の会話終結部における現代日本語交感発話の考察

肖, 潔

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/84008
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.21.l35
KEYWORDS : 交感的力;前景;背景;意識的続行性接触;無意識的接触性接触

Abstract

交感発話は,会話の場の雰囲気を和らげる機能を持っているため,主に会話の開始部に存在すると認識されてきた。しかし,交感発話は会話の開始部だけではなく,会話の中心部や終結部にもさまざまな形で存在している。本論は,これまでの研究の続きであり,初対面時の会話の終結部にある交感発話の特徴を考察することを目的とする。これまでの研究では,交感発話を〈社交性〉,〈目的性〉,〈情報性〉,〈共感性〉という4つの特徴を持って異なるレベルの交感発話を分析した。本研究では,前景と背景の概念を用いて,交感発話の分析を行った。その結果,交感発話には,情報が省略され,交感機能を前景化した典型的な交感発話,そして,ほかの機能(他動的機能など)を明示的に持っているが,交感機能も後景として存在している準交感発話,さらに,本来の意味が漂白され,交感発話として働く疑似交感発話がそれぞれあることが明らかになった。加えて,〈意識的続行性接触〉・〈無意識的接触性接触〉・〈続行失敗性接触〉・〈一回性接触〉という人間の接触パターンを分類したうえで,それぞれのパターンにおける初対面の会話終結部に異なる姿がとらえられた。その結果,終結部の交感発話は,会話を円満に終了させ,今後の交友関係や次回の会話を円滑に行うための土台作りというメタレベルの機能を持つことが明らかになった。一方,喧嘩別れで続行性接触が失敗となった場合,話者の不満から会話の終結部は円満に終了せず,今後の関係構築に有益な交感発話を用いないこともみられた。

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