研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第21号

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英語前置詞 on の迷惑・不利益を表す用法に関する意味論的・語用論的分析

松村, 大寿

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/84011
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.21.l73

Abstract

本稿では,多義語である英語前置詞on の意味ネットワークにおいて「迷惑」の意味が1つの固着した意味をなしているかどうかを判断すべく,Tyler and Evans(2003)に基づき,on が持つ迷惑の意味・用法を分析した。まず迷惑の意味に関しては,その意味的動機付けと成立年代に着目し,共時的にon の多義的構造を分析した先行研究の議論と通時的にon の意味を捉えたOED の記述を分析した。これを踏まえ,本稿は,迷惑の意味が「影響」の意味から成立したこと,ゆえに迷惑の意味は他のon の意味から区別されることを主張する。他方の用法に関しては,母語話者に対するアンケート調査の結果に基づき,迷惑の意味が文脈に応じて現れたり消えたりするのかどうかを検討した。そして,Mary ate ice cream on me. のような表現の容認度が迷惑を意味する文脈において著しく増加したり,My father has died on me. のような典型的な迷惑表現における迷惑性が矛盾する文脈において取り消されたりすることが確認された。この点でon の迷惑の意味は文脈依存性が高いのではないかと考えられる。従って,on の迷惑の意味は,他の意味と区別される一方で文脈依存性が高く慣習化の度合いが低いと見られることから,on の意味ネットワークにおいて完全に固着しているとは言えないものの現時点で固着化の途上にあると言える。

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