研究論集 = Research Journal of the Graduate School of Humanities and Human Sciences;第22号

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『説文解字』叙文の「諷籒書九千字」に対する考察 : 段注を中心に

路, 勝楠

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/87873
JaLCDOI : 10.14943/rjgshhs.22.r1

Abstract

『説文解字』(以下、『説文』と略稱)は後漢の許慎の著書で、中国最古の部首部類体字書である。字書史おいては大変重要な存在である。そして清の段玉裁が施した注(以下、「段注」)は、『説文』を研究する場合に最も重視される注釈である。許慎の『説文』の叙文(以下、「許叙」)、特にこれに対する段注に関して研究すれば、許慎の立場からの文字の成り立ち、当時の文字使いの状況、『説文』作成の意図、また段玉裁の立場からの許慎に対する解釈、その解釈の妥当性などが明らかになる。 本論文において特に問題にしているのは、許叙「諷籀書九千字」の段注についてである。『説文』全書にある段注を以て段玉裁の意図を説明する。明らかにしたのは、段玉裁は籒書の数は絶対九千字に達すことがないことを力説し、許叙に所謂「九千字」は「史籒篇」あるいは「籒書」の文字数である可能性を否定した。そして「籒」は名詞ではなく動詞である可能性を示した。また聲訓、転注などにより「籒」は「讀」の意味になることを証明することによって、「籒」は動詞の場合でも意味が通じることを論じた。さらに、漢の時代の「取人之制」において重視されている律だからこそ、九千字まで「推演發揮」ができる能力を求められる。以上のように、段玉裁の立場から段注の「諷籒書九千字者、諷謂能背誦尉律之文、籒書謂能取尉律之義推演發揮、而繕寫至九千字之多」という説明の妥当性を論じてみた。

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