メディア・コミュニケーション研究 = Media and Communication Studies;58

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Der Wortschatz bei >Virginal< : Versionen (V10), (V11) und (V12). Teil 2: Heiden und außer-sowie übernatürliche Wesen

Terada, Tatsuo

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/43198

Abstract

小稿は、中世ドイツの「ディートリヒ叙事詩」(Dietrichepik)のひとつである『ヴィルギナール』(>Virginal<)の語彙、およびその用法の特徴を記述する試みのひとつである。これに先立つ前稿 Der Wortschatz bei >Virginal< ― in den Versionen (V10), (V11) und (V12) ―. Teil 1: Kriegerbezeichnungen(同タイトル「(1)戦士を表わす表現」北海道大学ドイツ語学・文学研究会『独語独文学研究年報』第36号2009年)では「英雄」や「騎士」など戦士を表わす典型的な語彙を分析した。小稿はそれら戦士と敵対関係にある異教徒・巨人・竜に加え、保護される側の侏儒も考察の対象とし、主として以下の知見を得た。1. 『ヴィルギナール』は中世ドイツの英雄文芸としては珍しく(主人公の敵対手である)異教徒の詳細な記述から始まる。2. 主人公ディートリヒ・フォン・ベルンの敵として異教徒・巨人・竜が登場するが、異教徒と巨人の頭目以外はほとんど名前が出ない。しかしキリスト教の洗礼を受けておらず、死後の昇天も望まない巨人との戦いでも、騎士道のルールに則る一騎打ちの場合は巨人の名も挙げられる。彼らは(主人公側の)対戦相手とともに「勇士」(degen)と称されることがある。3. V12版においては、キリスト教徒と異教徒を対立させる視点が他版より強く前面に出ている。その一方同版では、古風とされる用語は改められているという通説に対する反証(「勇士」wîgantの多用)も認められる。4. 異教徒・巨人・竜は上述のように、通常「英雄」や「勇士」という敬称を付されることがないものの、それぞれに特徴的な形容辞(とりわけ「強い」starc)は認められる。5. 『ヴィルギナール』の完本である三写本では展開に大きな違いがある。V11・V12では最後に主人公ディートリヒと侏儒の女王ヴィルギナールが結婚する。さらに両版では、最後にひとりの巨人が現われるものの、他のすべての巨人とは異なり殺されずにすむ、という明らかな演出が見られる。これは宴を前にして、(改)作者が主人公の寛容の徳を強調しようとした結果とも考えられる。

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