經濟學研究 = The economic studies;第60巻第3号

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1920年代アメリカの消費論 : 女性経済学者ヘーゼル・カーク

生垣, 琴絵

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/44489
KEYWORDS : 消費;生活水準;20世紀;女性;アメリカ

Abstract

20世紀初頭のアメリカでは, 都市部での豊かさを背景に生活水準を規定するものとして消費を捉え研究する動きが始まった。その一つが女性経済学者ヘーゼル・カーク(Hazel Kyrk, 1886-1957)の消費論である。 本稿では, カークが主著 A Theory of Consumption (1923)で, 当時の心理学や社会学などを応用して消費を探求するとともに, 消費者を消費=選択を行なう主体として位置づけ, 消費が構成する生活水準を検討し, 到達すべき高い生活水準とそのために必要な「賢明な消費」, すなわち, 消費者と消費の質的向上(消費の倫理)を説く主張であったことを示す。それは, 現実の消費生活の視点を経済学批判の足場とし, 既存の経済学とは異なる視点から消費者に着目し, 独自の消費経済論を提示する試みでもあった。カークは生涯, 消費の問題に取り組み, 経済主体としての消費者の活動に注目し続けた。彼女自身はあくまでも経済学の問題として消費を論じたが, それは, 家政学分野の消費研究の発展も促した。同時にその成果を受け継ぐ多くの女性研究者たちを育てたことは, カークが果たした大きな貢献の一つであった。

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