經濟學研究 = The economic studies;第60巻第4号

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公的年金の制度分析

小山, 光一

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/44998
KEYWORDS : 公的年金;年金の収益率;少子高齢化;国民年金の空洞化;所得再分配

Abstract

本稿では, 「年金の収益率」という概念を導入し, この視点から我が国の公的年金制度を分析している。ここで「年金の収益率」とは, 投資として若いときに支払う保険料と税負担の合計をとらえ, 収益として老後に受け取る年金から老後の税負担を控除した金額をとらえて, 両者の比率をとったものである。本稿では, 世代全体および各個人の年金の収益率の構造を解明している。基本的な問題は, 基礎年金における国庫負担率の引き上げは, 本当に年金の収益率を高めるか否かである。本稿では, 基本的に, この問題に対する解答は否であることを主張する。国庫負担率を引き上げると, 確かに保険料は軽減されるが, 若いときと老後の税負担が高くなるので, 保険料と税負担の合計は変わらない。このため, 年金の収益率が高くなることはない。ただ, 異なる世代間あるいは異なる個人間で, 年金の収益率に大きな格差が生じ, 強い所得再分配を引き起こすだけである。最終的な結論として, 現行の公的年金制度を維持しながら, 国庫負担率を引き上げて, 制度の欠陥を埋め合わせていく政策は誤っている。抜本的な改革として, 現行の2階建の公的年金制度を廃止し, 新たに所得比例年金のみの制度を創設すべきであることを主張する。

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