北海道歯学雑誌;第31巻 第2号

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咬合挙上副子を用いた岐合挙上が咽頭期膜下運動に及ぼす影響について

北森, 正吾;鄭, 漢忠;原橋, 綾子;山崎, 裕;北川, 善政

Permalink : http://hdl.handle.net/2115/45811
KEYWORDS : 咬合拳上;咽頭期嚥下運動;嚥下造影;嚥下障害

Abstract

嚥下反射は口腔,咽頭および喉頭の感覚受容器で受容された感覚入力が脳幹へ伝えられ開始すると考えられているが,嚥下反射の開始に関しては未だに不明な点が多く,口腔期の変化がどのように咽頭期嚥下を修飾するかは明らかではない.本研究の目的は,咬合挙上床を装着し咬合高径を挙上した場合に,咀嚼嚥下において咽頭期嚥下運動に影響が生じるかを検討することである.健常な成人男性30人を被験者とし,上顎咬合挙上床装着時と非装着時で固形食品を咀嚼嚥下する様子をvideofluorography(VF)で撮した.VF像から咀嚼,食塊の咽頭通過,嚥下開始時の食塊の位置,嚥下効果の4項目について咬合挙上床装着時・非装着時で比較検討し以下の結果を得た.1.咬合挙上床の装着にともない口腔内時間(OCT)に明らかな変化を認めなかったが,一回の咀嚼サイクルに要する時間(OCT/ST)が延長し,全経過時間(TSD)は有意に延長した(p=0.01).2.食塊の咽頭通過時間全体に明らかな変化は認めなかったが,そのうちVAT(食塊先端が下顎下縁を通過してから喉頭蓋に達するまでの時間)は有意に延長した(p=0.02).3.非装着時で嚥下を開始する際の食塊の位置は多くの被験者(80%)において咽頭上部領域にあり,その傾向は咬合挙上床装着時においても変化を認めなかった.各個人では咬合挙上床の装着にともない嚥下反射の開始時間が早まる者が多かった(50%).4.咬合挙上床の装着にともない口腔内の残留量が増え,嚥下効率が有意に低下した(p=0.02).以上より,咬合拳上副子を用いた咬合挙上は咽頭期嚥下運動に影響を及ぼすことが明らかになった.その原因として口腔内容積,舌-口蓋間距離,舌・口腔周囲筋の運動などの形態的および物理的変化,または口腔内の末梢性の感覚受容器の入力の変化が咽頭期嚥下運動に影響を及ぼす可能性が示唆された.

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